2007年06月13日

リヒテンシュタインレーダーと「鹿の角」

ドイツの夜間戦闘機というとシンボルとして鹿の角のような機上レーダーのアンテナを思い浮かぶでしょう。これは「リヒテンシュタイン」というレーダーで、オーディオをやっている人ならよくご存知のドイツのテレフンケン社が開発したものです。(後期には他にベルリンやネプツーンというタイプも出てきます)
Defending The Reichの中ではR&Dで能力を向上させることが出来、迎撃時の触接チェックで有利に出来ます。

ju88.gif

アンテナはいわゆる八木アンテナで志向性があります。4本あるということは4つのフィールド(輻射域)に照射できるということです。これはAzimus(鉛直)方向に二つとHorizontal(水平)方向に二つのフィールドです。飛行機の場合は3次元的な位置を割り出さねばなりませんので、たとえば水平方向でもどちらからどちらへ移動しているという情報が必要なわけです。
2ndと呼ばれた後方監視レーダーは後ろにいるかどうかだけ分かればいいので一本のアンテナです。

映画に出てくるレーダースコープはPPIと呼ばれる2次元で地図のように位置が分かる方式ですが、当時のレーダーの主流はAスコープと呼ばれるCRTのオシロスコープのような波でエコーを表す方式です。ただし英軍は進んでいたので爆撃用のH2SにはすでにPPIを使用していました。
「ブラッカムの爆撃機」の中の宮崎さんが書いたレーダーの表示はAスコープという点では正しいのですが、実際のリヒテンシュタインのスコープはこのスコープが鉛直方向と水平方向の二つあって、それぞれ上下にエコーが描かれます。その上下のエコーのゆれで敵機の機動がわかったようです。(おそらく宮崎さんは艦載のレーダーを念頭にして書いたと思います)
さらに初期型のFug202は分解能が高いので距離専用のCRTがありました。

fug220.gif

上記はFug220(SN-2)レーダーのスコープの模式図ですが、左が水平方向の表示CRT、右が垂直方向です。グリッド(点)は2km単位です。Aスコープなので一番左の山が自機、それ以降の山が反射波、つまり敵機か何かです。左右に二つずつ波形があるということは4つのアンテナのカバレッジを示しています。
右の4kmのところにエコーがあるので垂直方向に4kmのところになにかいることを示しています。7km以降は地面の影響(いまでいうグランド・クラッター)です。
このエコーの大きさで敵機のサイズ、また上下のエコーのゆれ具合で移動方向がわかります。

リヒテンシュタインレーダーには大きく分けると二つのタイプがあります。前期のFug202(BC)と後期のFug220(SN-2)です。
(またBCの改良型のFug212(C-1)とさきにふれた2ndと言われる後方警戒レーダーもあります)

それぞれスペックは下記の通りです。

type ------ 4発重爆 --- 中型双発 --- 戦闘機 --- 最小(分解能)

Fug202 ----- 4.3Km ----- 3.0Km ----- 1.7Km ----- 150m

Fug220 ----- 8.0Km ----- 5.8Km ----- 3.2Km ----- 1000m


202は距離専用のCRTがあり一つのグリッド単位は100mですがが戦記を読むと当時のレーダー手はもっと細かく読んでいたようです。
220は距離専用のCRTはなくグリッドは2km(改良型は200m)です。

これをみると分かりますが、前期型のFug202の方が最大探知距離は短いのですが、より細かい分解能があります。後期型のFug220はより遠くまで探知できますが、最短距離とこまかい分解能は劣っています。このためFug220の初期型ではFug202を併設していました。
これはFug220のほうが波長の長いレーダー波を使ったからです。
なぜ途中で変更したかというと、イギリス軍のウインドウ(チャフ)の対策のためです。
イギリス軍は鹵獲したドイツ軍のレーダーを解析した結果、Fug202の波長に合わせた金属片を使ってチャフにしたわけです。
それで一時ルフトバッフェの防空はマヒしますが、Fug220で波長を変えたおかげで再び機上レーダーを運用することができました。

波長が長いということはアンテナが大きいということですので、おもしろいことに後からできたFug220(SN-2)の方が大きい訳です。実はこちらが「鹿の角」と呼ばれたほうです。
たいてい後にできたほうが小さいと思われがちなのでここは混同されがちです。たとえば「ブラッカムの爆撃機」の中で宮崎さんが描かれているのは大きさからしてFug220(SN-2)と思われますが、時期的にはウインドウの前なので本来は小さなFug212(C-1)が妥当であると思われます。ここは大きい方が迫力があるというマンガ的な演出とも言えはします。

ちなみにFug202での速度低下はMe110で40kmも下がったそうですが、大型のJu88では10-20Km程度に収まったようです。大型のFug220ではMe110では50Km以上の低下があったということなので、後期型の夜間戦闘機がJu88ベースにシフトしていったのはうなづけるところです。
posted by Y.Sasaki at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | HPS : Defending the Reich | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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